日本が円安の理由。為替介入効果ある?

2022年、円安ドル高の勢いが強く、歯止めが効かなくなっています。

およそ32年ぶりの円安水準を更新し、ドル円レートは1ドル=150円代前半まで上昇しました。(2022年10月21日現在)

りおな

どんどん円の価値が目減りしていきます…

しかも私達の生活で必要な生活用品やエネルギー資源など、輸入品の価格が高騰しています。

そんなとき、

  • どうして日本は円安なのか理由が知りたい
  • いつまでこの円安が続くのか気になる
  • 最近あった為替介入って何なの?

などといった疑問や不安を抱く方もいらっしゃることでしょう。

そこで今回の記事では「日本の円安の現状」について触れながらその理由や原因、これまでに行われた「為替介入」の情報についてご紹介させて頂きます。

現在、日本の円安や為替介入について知りたいと思っている方は参考にして頂けますと幸いです。

円安は日本経済にとってプラス?

2022年10月には1ドル=150円前半まで円安になってしまいました。輸入商品は価格が値上がり、iPhoneやエネルギー資源など、多くの食品の価格が高騰しています。

これまで円安は、

  • 外国人観光客が多く訪日する
  • 自動車などの日本の輸出企業の収益が増える
  • 対外直接投資で得られる海外収益を換算すると増える

などといったメリットから日本経済にとっては「プラスになる」と考えられていました。

上記のような期待をしていたことから、「円安は経済成長だ」という結果を日本銀行は断固として主張していました。

しかし、現在の円安は良い状況なのか?

りおな

まずは円安のメリット・デメリットをみてみましょう。

円安のデメリット ①輸入企業・家計に負担増

我々日本人の生活に一番関わってくるのは、必要な生活用品やエネルギー資源など様々なモノの物価が高くなることです。

基本的には物価が上昇する時は、賃金上昇を伴います。

賃金が上昇し、人々の購買意欲が高まることによって需要>供給の状態になり、物価が上昇し、インフレになっていきます。

しかし、今の日本の状態はロシアやウクライナの戦争、日米の金利差によるドル高など、外的要因によって物価上昇しているだけなので、賃金は上昇していなければ、人々の購買意欲も高くなっていません。

このような状態で円安になっても輸入企業と家計に負担が増すだけという状態になってます。

円安のデメリット ②海外旅行が高くなる

円安ということは、外国の通貨の価値が相対的に上がることを意味します。

外国に行った時に10ドルのハンバーガーを頼んだとすると、

1ドル=100円のときは、1個1,000円。

1ドル=150円のときは、1個1,500円。

つまり、2021年1月の時、ドル円レートは1ドル=102円だったので、単純計算で海外旅行にいくだけで物価が約1.5倍増になっている状態になります。

この円安状態だとなかなか海外に積極的にはいきたくならないでしょう。

10月上旬にシンガポールに行きましたが、物価は大体日本の3倍くらいで、一風堂のラーメンが一杯3,000円(30SGD)、タクシーは最低でも1,000円〜2,000円(10~20SGD)はしました。※1SGD=100円換算

りおな

1.5倍って結構ボディブローのように効く〜

1杯3,000円の高級ラーメン ※海外で食べるとめっちゃ美味しい

円安のデメリット ③ガソリン・電気代が高くなる

日本は原油や液化天然ガス(LNG)などのエネルギーを輸入に頼っています。

基本的にガソリンは原油から生成されますが、この原油が外貨建て取引のため、円安が進行すれば、輸入コストが増加し、輸入企業の業績圧迫につながります。

また、日本における発電の割合は、2020年度で化石燃料による火力発電が76.3%を占めています。

なので円安が進行すると原油の輸入コストが増えて、ガソリン・電気代が高くなるということです。

次に円安のメリットをみてみましょう。

円安のメリット ①輸出企業の利益増加

例えば、トヨタのような輸出企業は海外で稼いだ利益は外国の通貨で入ってくるので円換算すると、円安時に利益が膨らみます。

今まで10000ドルで車を売っていたとすると、

1ドル=100円の時は、100万円

1ドル=150円の時は、150万円

の利益になります。

円安になればトヨタのような輸出企業は国内で作った製品の輸出が増え、生産が増えれば、下請け企業に恩恵が広がり、雇用も増える効果が期待されますが、実は日本企業は過去10年で海外での現地生産を増やしてきたため、「円安→輸出増→雇用増」という効果は弱まっています。

円安のメリット ②外国人観光客の増加

日本人が海外旅行のコストが高くなるのとは逆に、外国人からすればホテルやレストラン代がドル換算で安くなります。

しかし、数年はコロナで観光がストップしていたので、円安のメリットはそこまで享受されていませんでした。

しかし、10月11日に入国者数の上限撤廃、個人旅行の解禁、ビザの免除など、大幅に訪日外国人観光客の受入れが緩和されたことにより、観光客が急回復する可能性もあるかと思います。

しかし日本経済としては観光収入が増えるのはいいことですが、消費者の立場にたてば、外国人が増えることでホテルやレストラン、観光名所が混雑し、価格も上がりやすくなる可能性があります。

実際に私の地元北海道の札幌ではコロナ前、一時期街のどこを歩いても外国人だらけなこともありましたし、大好きなスープカレー屋は連日列ができていたのを煩わしく感じたこともあります。

りおな

混雑と行列は苦手なんだよね

円安のメリット ③外貨建資産の価値上昇

外貨預金や外国株に投資している場合、円安になれば円換算の評価額が増えます。もちろん、株価が下落すればトータルで損失となる可能性もあります。

現に私は2022年の3月から米国株投資を始めましたが、米国株に投資する時は必ず日本円をアメリカドルに変えなければいけないので、株価はそこまで上昇してなくても、ドルを持ってるだけで利益が出る状態になってました。

円安のデメリット

  1. 輸入企業・家計に負担増
  2. 海外旅行が高くなる
  3. ガソリン・電気代が高くなる

円高のメリット

  1. 輸出企業の利益増加
  2. 外国人観光客の増加
  3. 外貨建資産の価値上昇

まとめると以上が円安のメリット・デメリットです。

10月に大幅に訪日外国人観光客の受入れが緩和されたことで円安のメリットが出てくる兆しがでてきた感じはありますが、基本的に円安の恩恵はほとんどなく、物価高騰のデメリットが大きく出てきてしまいました。

日本はなぜ円安になった?

ではどうして円安になってしまったのでしょうか?

円安に陥ってしまった原因としては、さまざまな要因がありますが、

りおな

日本と米国の金利差が一番の理由として挙げられます。

米国ではインフレを抑え込むために大幅な利上げを進め、大規模金融引き締めをしていますが、日本は大規模金融緩和を続けていることによって金利差が拡大していることが円安の一番の原因です。

アメリカではコロナ禍で民間経済に大量のマネーを供給しつづけた結果、行き過ぎたインフレが起きてしまいました。

インフレになると収入も増える分、物価が上がりますが、収入伸び率が追い付かない低所得者は生活が困窮していきます。

この状況を受けて、アメリカの中央銀行FRBは2022年3月から利上げを開始。

金利が上がると企業は銀行からの借りづらくなるので設備投資を縮小します。

個人は住宅ローンや自動車ローンを組みにくくなり、高額商品の購入を後回しにします。

このように、利上げによって経済活動は抑制の方向に進んでいき、物価の上昇も止まるというロジックです。

対して日本は大規模金融緩和を続けています。

金融緩和とは?

金利の引き下げや資産購入によるマネー供給で、民間の投融資や消費を促す政策です。

日銀は景気回復をめざし、2013年に2%の物価上昇率目標を導入して大規模な金融緩和を続けてきました。

しかし2022年7月、日銀は決定会合で22年度の物価上昇率の見通しを2.3%に引き上げました。

日銀の目標に届いているにもかかわらず、金融緩和を継続するということです。

理由は、新型コロナウイルス下からの回復途上にある日本経済を支えるためです。

黒田東彦総裁は、この先エネルギー価格による物価押し上げ効果が減るとの見方を示しました。

日銀は、物価の上昇に賃金の伸びが追いついておらず景気悪化を招く懸念があると見通しており、金融緩和の継続が必要と判断しています。

金融緩和を続ける日銀とは対照的に、海外の中央銀行は相次ぎ利上げを決めています。

アメリカは0.75%以上の大幅利上げヨーロッパも0.5%の利上げと11年ぶりの利上げに踏み切っています。

今すぐ円安を食い止める方法があるとすれば、日本も政策金利を引き上げることでしょう。

しかし、日本の黒田総裁は利上げについて「全くない」と言い切っており、世界との金融政策の違いが鮮明になっています。

何故日本は政策金利を引き上げない?

ではなぜ政策金利を引き上げられないのでしょうか?

金利の上昇、最大の懸念は国債価格暴落、つまり、国債バブルの破裂にあります。

債券は、金利が上昇すると価格は下がり、金利が低下すると価格は上がる特徴があります。

現状、国債の保有主体は、日本銀行44.3%を筆頭に、生保等19.6%、銀行(預金取扱機関)14.7%となっています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d88811616032df746406a40bde14a1baf602d290

つまり、日銀は世界最大の日本国債保有主体なので、金利引き上げによる国債バブルの破裂の影響を最悪の形で受けることになります。

ただし、金利引き上げにより国債価格が暴落したとしても、あくまでも含み損でしかなく、日銀が日本国債を満期まで保有すれば形式上問題はありません。

しかし、日銀が満期償還まで含み損を抱えている事実に変わりはないので、マーケットがこの含み損をどう評価するかが問題になってきます。

仮に、マーケットが問題なしとすれば日銀の信用力は維持され、したがって日銀の信用力に裏打ちされる日本円の信用力も維持されるでしょう。

反対に、マーケットが日銀の国債関連の含み損について、日銀のバランスシートを著しく棄損し、日銀の経営基盤に大きなマイナスだと評価すれば、日銀の信用力は地に落ちる。

そうすれば日本円の価値も地に落ち、日本経済は激しいインフレと円安に見舞われるでしょう。

このように政策金利の差が出ることによって、金融資産は円からドルへシフトされ、円安の状態になってしまっています。

米2年債は4.2%(2022年10月現在)

アメリカの国債を買うだけで2年で4.2%、資産が増える状態です。

対して日本の2年債の利率は、0.01%です。

100万円預けておくと、2年後に

・104.2万円になる

・100万100円になる

どちらがよいでしょうか?

小学生でもわかると思いますが、前者の方がいいですよね。

りおな

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円からドルへ資産がシフトしていく

さらに日本の政策スタンスが変わらないという予想から、円を売りドルを買う動きが広がっています。

また、今後インフレが続き、円安がさらに加速すると「ハイパーインフレーション」という状態になります。

ハイパーインフレーションとは?

過度にモノの値段が上がりすぎる状態のことです。国の財政悪化やお金の供給量が増えすぎたことなどが原因でお金の価値が下がってしまい、モノを買うために必要なお金の量が増えてしまうのです。

「ジンバブエ・ドル」をもって買い物にいく市民

例えば、ジンバブエという国で発生したハイパーインフレでは、インフレ率は2億3,000万%と公表されています。

なんと、自国通貨ジンバブエ・ドルは約300兆ドルで日本円1円程度の価値になってしまいました。

市民は普段の買い物に、大量の札束を持っていかなくてはならない事態になり、最終的には「100兆ドル紙幣」まで発行されるなど、経済は大混乱になりました。

ハイパーインフレは一度発生してしまうと、国や中央銀行がコントロールしきれない危機的な状態になってしまいます。

過度にモノの値段が上がりすぎると、私達の生活も脅かされてしまいます。

またハイパーインフレが発生すると、国や銀行でコントロールが難しい状態になってしまうことから「預金封鎖」という想像ができないような不測の事態になってしまう可能性もあるのです。

りおな

日本円の価値なくなったらどうしよ。

日本では起こり得ない話しだと思ってしまいがちですが、これからも円安が進んでしまえば「絶対ありえない話」では済まないかもしれません。

為替介入とは?

最近では「為替介入」という言葉を耳にするようになりましたが、これは一体なんなのでしょうか?

りおな

為替介入は「外国為替市場介入」と呼ばれ、為替相場が急激に変動したときなどに政府・日銀が売買を行って安定化を図ることです。

日本では、為替介入は財務大臣の権限において実施がされるのですが、今回のような円安での為替介入では保有している米ドルを売り、円を買うという流れになります。

ロイター

10月20日、神田財務官は、円買い原資は「無限にある」と発言しています。

りおな

円買いの原資が無限にあるわけがない(笑)

介入の規模には限界があります。

ドルを売る介入は、日本政府の持つ外貨準備を原資とし、その残高は約200兆円と言われています。

日本政府の介入原資が尽きたと市場が判断すれば、米国が利上げを続ける中でかえって円が売られる可能性もあり、円安がさらに進めば、輸入品の価格上昇で日本の家計はさらに苦しくなりかねません。

市場介入はあくまでも時間稼ぎでしかなく、アメリカのインフレが収まらない限りは、せっかくの為替介入も焼石に水状態になってしまいます。

アメリカのインフレが落ち着くのが先か

それとも日本の介入資金がなくなるのが先か

まさに今は一瞬即発の状態です。

日本の為替介入(2022年)

今回の円安を受けて2022年9月22日と10月21日の2回、為替介入が既に実施されています。

9月22日の為替介入は1998年6月以来24年ぶりに行われました。

2022/9/22 ドル円チャートの動き

ドル円相場は為替介入の影響で1ドル=145円後半から140円前半まで5円超を下落させましたが、わずか1週間足らずで144円台まで戻ってしまいました。

10月21日の為替介入でも、1ドル=151円後半から146円前半までの5円超の下落でした。

2022/10/22 ドル円チャートの動き

しかし、為替介入は対症療法であり、あくまでも時間稼ぎの政策です。

日米金利差は縮小していないのでドル高トレンドは変わらないでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回は、日本が円安になってしまった理由や原因、為替介入についてご紹介させて頂きました。

円安は私達の生活に、大きな悪影響を及ぼしています。

石油などのエネルギー資源、さらに物価上昇により食品、生活用品までもが価格高騰を引き起こしています。

アメリカのインフレが落ち着くのが先か、それとも日本の介入資金がなくなるのが先か、このまま円安になり、ハイパーインフレーションになってしまうのでしょうか。今後も日本の経済に目が離せません。